勃起不全(ED)
EDとは?
ED(Erectile Dysfunction)とは勃起障害のことで、性交時において十分な勃起が得られない、または維持できないために満足な性交が行えない状態のことです。
日本での患者数は1,000万人以上いると推計されており、また、男性不妊の原因の1つであることも判明してきました。
EDの発症には生活習慣病をはじめとする様々な要因が関与しています。具体的には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化、肥満、男性更年期障害、睡眠時無呼吸症候群、加齢、喫煙、飲酒、運動不足、メンタルなどが発症に関与しています。
勃起の仕組み
勃起は、血液が陰茎の海綿体に流れ込むことによって、海綿体が膨張して生じます。
普段は、海綿体に血液を送る血管が周囲を取り囲む平滑筋によってギュッと締められているため、海綿体に血液が流れ込みにくい状態になっています。
しかし性的刺激が脳に入ることで、陰茎の神経や内皮細胞からNO(一酸化窒素)が分泌され、このNOによってcGMPという平滑筋を弛緩させる物質が生産されます。cGMPが平滑筋に作用することで血管の絞めつけが緩み、血液が海綿体に流れ込みむようになります。
EDの原因
勃起の流れのどこか1つでもうまく進まないと、十分な勃起が起こらない、十分な硬さが出ない、中折れなどのED症状が起こります。原因を大きく分けると、「機能性ED」と「器質性ED」の2つに分類され、それぞれいくつかの種類にわかれます。
◆機能性ED◆
性行為に対する不安、ストレス、トラウマ、またはうつ状態、うつ病など精神疾患が原因です。
心因性ED
加齢による男性ホルモンの低下により男性更年期障害が生じることで、性欲の減退、勃起力低下、射精感、うつ状態などが生じることが原因です。
男性更年期障害によるED
抗うつ薬、睡眠薬、降圧薬、前立腺肥大治療薬、脂質異常症治療薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗コリン薬などの薬剤投与が原因です。
薬剤性ED
◆器質性ED◆
陰茎海綿体に血液を送る動脈に異常があることが原因です。そのため、十分な血液が海綿体に流れず膨張できません。主な原因は動脈硬化であり、肥満、運動不足、飲酒、喫煙、食生活の乱れなどから生じる生活習慣病が関与しています。
動脈性ED
血液が陰茎海綿体から流出してしまい、陰茎が十分な硬さを保てなくなります。しかしはっきりとした原因は分かっていません。
静脈性ED
脊髄損傷や脳血管障害、骨盤内手術の後遺症、糖尿病などで、脳からの神経伝達が陰茎に達しないことが原因です。
神経性ED
陰茎そのものの障害によってEDを発症します。
陰茎性ED
EDの原因が1つだけではないことも多く、「機能性ED」に「器質性ED」が併発している場合もあります。
適切な治療を行うために、しっかりと検査および診断をすることが重要となります。
検査・診断
EDの診断と原因の特定に、まずは問診や質問紙を活用して状況を詳しく伺うことが重要です。
当院では国際勃起機能スコアを使用しながら、過去6カ月の勃起の状態や性交時の状況を把握します。病歴、内服薬、生活習慣、ストレスなどの聴取時に、心因性EDや男性更年期障害によるEDが疑われる場合は、メンタルストレスチェックやAging Male’s Symptomsスコアを使用して評価します。
そのうえで、器質的な原因として何らかの病気が潜んでいないかどうかを調べるために、血圧測定や血液検査を行います。血液検査は健康診断などのデータがあれば代用可能なのでご持参ください。
治療
EDに対する治療として用いるのは、まずPDE(ホスホジエステラーゼ)5阻害薬という内服薬です。【勃起の仕組み】で説明したとおり、cGMPが平滑筋を弛緩させることで血液が海綿体に流れ込んで勃起が生じますが、このcGMPを分解してしまうのが体内のPDE5をいう酵素なのです。PDE5阻害薬はPDE5を阻害することでcGMPの濃度を高め、勃起の発現および維持を助けます。心因性、器質性のいずれに対しても一定の効果があることがわかっています。
EDは生活習慣の乱れが関与していることが多いため、生活習慣の見直しやトレーニング指導を同時に行っていきます。
男性更年期障害が関与している場合はテストステロン補充療法を併用したり、心因性の関与が強く疑われる場合は精神科受診を勧めさせていただく場合もあります。
PDE5阻害薬で効果がない方やPDE5阻害薬を飲めない方は、血管の拡張を促すプロスタグランジンという薬を陰茎に注入する方法もありますが、現在当院では取り扱いしておりません。
◆お薬の種類◆
シルデナフィル
(先発品:バイアグラ)
硬さ:++、効果でるまでの速さ:++、持続時間:+、副作用:+
<特徴>
最初に発売されたED薬。効果はバルデナフィルに劣りますが、全体的なバランスが良く、リピータが多いです。食事の影響を受けやすいのでなるべく空腹時に飲む必要があります。
<副作用>
ほてりや潮紅(5.78%)、頭痛(3.87%)など
バルデナフィル
(先発品:レビトラ)
硬さ:+++、効果でるまでの速さ:+++、持続時間:++、副作用:++
<特徴>
効果が出るまでが早く(15-30分)、シルデナフィルよりも硬さがでるので、他の薬では物足りない方にオススメです。軽い食事程度ではあまり影響を受けないので使用しやすい。しかし効果が強い分、副作用も出やすい。
<副作用>
ほてり(10.6%)、頭痛(11.7%)、鼻閉/心悸亢進/めまい/消化不良や嘔吐(1%以上)など
タダラフィル
(先発品:シアリス)
硬さ:+、効果でるまでの速さ:+、持続時間:+++、副作用:±
<特徴>
圧倒的な持続時間(約24-36時間)と副作用の少なさが特徴です。他の2剤と比べると硬さはでませんが、ナチュラルな勃起に近いと言われてます。食事の影響はほぼ受けません。
<副作用>
他の2剤と同様(副作用発現頻度が明確となる調査は実施していない)
心疾患のある方、重度の肝障害や腎障害のある方、硝酸薬等の併用禁忌薬を飲まれている方などはご利用できない場合があります。また、非常に稀ではありますが、死亡例を含む心筋梗塞等の重篤な有害事象の報告があるため、問診の際にはご自身の症状や疾患、服薬情報を正確にお伝えください。
当院のED薬はすべて国内承認薬です。
治療期間(3錠共通)
毎日定期的に飲むお薬ではなく、必要な時に用法容量を守って使用してください。1日の投与は1回とし、投与間隔は24時間あけてください。性行為の約1時間前に服用してください。